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歴史を振り返りますと、本市は海の恵みを享受しながら水産・港湾都市として発展し、歴史や文化を育み、近隣市町の中心的な役割を果たしてまいりました。しかし、国際的な漁業規制などによる影響を受けての魚市場の水揚げ減少、あるいは物流形態の変化による港湾取扱い貨物量の減少、さらには観光形態の変化による交流人口の減少などにより、まちの活力が徐々に失われつつあります。こうした状況を打開するため、歴史に学び海に活路を求め、水産業や港湾物流などの基幹産業を再生させる施策に関係業界とともに全力を傾注してまいります。
また、経済活動がグローバル化へ向かう時代であるからこそ、地域資源を活用し、まちの個性を再構築し、新たな情報を発信することが求められております。本市の食文化や歴史資産が塩竈の魅力であることを再認識し、海辺の賑わい地区を核とする中心市街地の商業の活性化、さらに「仙台・宮城ディスティネーションキャンペーン」などと連携し交流人口の拡大を図り、産業と歴史・文化を融合させた賑わいと活力あるまちづくりを重点施策として取り組んでまいります。
かつて、本市にはまちを再興するために港を築き、再びまちに活気を取り戻した明治期の先人の歴史があり、市民生活や経済を支える「市民力」が脈々と受け継がれております。今、多くの市民の方々が、「しおナビ」などの新たな情報発信や食を活かしたイベント、歴史・文化の薫る交流の取り組み、福祉や教育の分野で、まちづくりに参画しております。今こそ、こうした市民の力が経済再生の動きと連動し、大きなエネルギーとなって塩竈再生に向かうものと確信しております。
今後とも、まちの主役であります6万市民の皆様が、誇りと愛着を持っていきいきと暮らせる「日本で一番住みたいまち:塩竈」の実現に向けて、市民と行政による協働のまちづくりを進めてまいります。
こうした視点に立ち、平成19年度を新時代に向けたスタートの年として位置付け、特に活気・元気の原点となる産業再生の施策を基軸としながら、以下の施策に重点的に取り組んでまいります。
第一に、基幹産業であります水産業振興の取り組みであります。
国際的な漁業規制や燃料油の高騰、さらに欧米やアジアでの魚食の普及により、我が国にとって安定的な水産資源の確保が困難となりつつあります。特に、水産加工業界における原魚不足と価格の高騰などにより、本市の水産を取り巻く環境は厳しさの一途をたどっております。このような状況を直視し、これまで蓄積された技術や研究施設などの水産関連機能の集積を活かし、観光的な視点を取り入れた食文化の情報発信や新たな商品開発、ブランド化等に取り組み、業界と一体となって塩竈の水産の再生に取り組んでまいります。
第二に、観光振興や中心市街地活性化により交流人口の増加を図る取り組みであります。
本市の魅力は、まず、市街地と海や港が近接していることにあり、またコンパクトシティとして狭い市域に都市機能が集中し、生活の利便性が高いことにあります。この特徴を最大限に活かしていくことが、さらなるまちの発展につながるものと確信いたしております。この5月、海辺の賑わい地区に商業施設がオープンし、多くの方々が潮の香り、千賀の浦風を感じながら、駅と海に隣接する新しいまちの魅力を堪能しております。この賑わいを中心商店街への回遊につなげる取り組みを商店主の皆様と協力しながら進めるとともに、海に育まれた歴史や文化、食、さらには浦戸の島々といった本市の魅力を観光資源として活かしながら、交流人口の増加を図ってまいります。
第三に、少子高齢化時代を迎えての福祉への取り組みであります。
全国的に少子高齢化が著しく、本市におきましても、年間出生数がこの10年で200人近く減少するなど少子化が急速に進行する一方、高齢化率は約25%と増加の一途をたどっております。このような状況で、子ども達が健やかに育ち、親が安心して子育てができる環境の整備が求められております。また、高齢者が住み慣れた地域や家庭において元気に安心して暮らせることが課題であると認識しております。今後とも、子育て支援や高齢者の健康づくり、また市民の健康を守る市立病院の経営改善などに取り組みながら、安心して暮らせるまちづくりを進めてまいります。
第四に、塩竈に誇りと愛着をもつ人づくりへの取り組みであります。
地域に真の豊かさをもたらすためには、人づくりのための施策の充実が極めて重要であります。魅力あるまちづくりは、市民一人ひとりが地域社会でいきいきと暮らすことにより実現できるものであります。今後とも、学校教育や生涯学習、生涯スポーツ、さらに市民活動などを通して、ふるさと塩竈への誇りや愛着を感じ、市民一人ひとりが活躍できる地域社会づくりを推進してまいります。