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日本は、先進国の中でも睡眠時間が少ない国と言われており、これは社会的な問題となっています。睡眠は体の疲れを取って回復させる効果があります。また、質の良い睡眠を得ると、成長ホルモンが多く分泌され、体の修復・回復させる働きが促進されます。そうすると、体内での代謝活動も活発になります。脳も十分に休息できるため、自律神経が整い、ストレスからの回復が可能になり、ストレス耐性が向上します。
さらに、睡眠には記憶を整理し、脳に定着させる効果もあります。睡眠が不足すると、眠気、疲労、集中力の低下、イライラ、ストレスの増加、免疫力の低下などが生じ、生活にさまざまな支障をきたします。特に産後は、睡眠不足による自律神経の乱れによって、イライラしたり頭痛や肩こりなど、心身の不調を起こしやすい時期です。
「良い睡眠」は、身体的な健康だけでなく、精神的な健康の維持・増進にも欠かせません。また、労働災害や交通事故など、眠気や疲労が原因となる事故のリスクも低減します。したがって、睡眠は健康の維持・増進のために不可欠な休養活動なのです。
「朝にすっきりした気分で起きられない」「日中ずっと眠い」「休日に寝だめをしてしまう」といったことはありませんか?
それは「良い睡眠」がとれていないサインかもしれません。
「良い睡眠」は、睡眠時間(量)と睡眠休養感(質)が十分に確保されることで得られます。
睡眠の量を反映する指標です。
睡眠は量をとればいいというわけではありません。必要な睡眠時間は年齢や体質、季節によっても変化します。
また、休日にまとまって多く眠る「寝だめ」は有効ではありません。
睡眠の質を反映する指標です。
朝目が覚めたときの睡眠休養感は、よい睡眠がとれているかどうかの指標にもなります。睡眠時間の不足だけでなく、睡眠環境や生活習慣などのさまざまな原因から影響を受けます。一方で、それらを改善しても睡眠休養感が十分に得られない場合は、睡眠障害が潜んでいる可能性があります。
ライフスタイルが多様化する中、睡眠に対する感覚や睡眠を確保する手段は、個人によってさまざまです。「よい睡眠」を得るためのヒントを紹介します。
起床後に朝日を浴びることで体内時計がリセットされ脳の覚醒度が上がり、気持ちのいい目覚めにつながります。また、日中に日光を浴びることで、夜間に睡眠を促すホルモンであるメラトニンの量が増加し、眠りにつきやすくなります。
睡眠の前にスマートフォンなどの強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、睡眠・覚醒のリズムが崩れ、寝つきが悪くなるといわれています。
就寝の約1~2時間前に入浴すると、ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間を短くする効果があるといわれています。
運動習慣がない人は、睡眠休養感が低いことが分かっています。
日中に身体をしっかり動かすと、寝つきをよくすることが期待できます。
一方で、就寝前1時間以内の激しい運動は、夜の眠りを妨げる可能性があります。
朝食を食べることは、体内時計を整えることに役立ちます。
塩分のとりすぎは夜間の排尿回数が増えるため、減塩を心掛けることで、睡眠中に尿意により目覚める回数を減らすことが期待できます。
日常生活のリズムを整えるために、朝食を含む3食をなるべく決まった時間にとり、バランスのよい食事を心掛けましょう。
摂取量の目安は1日400mg(コーヒー700ml程度)です。
カフェインは覚醒作用があるため、寝つきの悪さや中途覚醒の増加、眠りの質の低下を起こす可能性があります。
カフェイン摂取量を控えるためには、カフェインを含まないものに置き換えることがおすすめです。麦茶、そば茶、黒豆茶、とうもろこし茶などがその一例です。
また、カフェインはコーヒーやお茶だけでなく、エナジードリンク等にも含まれています。
カフェインってどんなもの?<外部リンク>
お酒は一時的に寝つきを促進しますが、睡眠後半の眠りの質を悪化させ、中途覚醒の回数が増加するといわれています。
また繰り返しお酒を飲むことで依存や耐性がつき、お酒がないと眠れない状態になってしまう可能性もあります。
毎日の飲酒は避け、晩酌は控えめにしましょう。
また、お酒がないと寝られないなど体調や生活にお酒の影響がでている方は、医師に相談することをおすすめします。
たばこに含まれるニコチンには覚醒作用があるため、習慣的なニコチンの摂取は、寝つきの悪さや中途覚醒の増加の原因になります。
また、睡眠時間の減少や日中の眠気が強くなるとも言われています。受動喫煙も同じように睡眠に影響を及ぼすため、喫煙する場合は周りへの配慮が必要です。
音楽を聴く、アロマオイルを焚くなど自分なりのリラックス方法を見つけることも、より良い睡眠に効果的です。ぜひ自分らしい睡眠を楽しみながら探してみてください。
また、客観的睡眠計測機器(スマートウォッチ等)や睡眠アプリ等で自分の睡眠データを知ることは、睡眠の改善に効果的です。
日常生活を変えても睡眠に関連する症状が続く場合、睡眠障害が潜んでいる可能性が考えられます。そのような場合は、早くに医療機関を受診しましょう。
睡眠はホルモンバランスに影響されます。そのため、月経周期や妊娠、更年期によって睡眠の悩みが増えることが多いです。
妊娠中の睡眠は妊娠経過とともに変化し、胎児の健康にも影響する可能性があり、子育て期の睡眠も健康増進・維持には重要です。また、更年期には睡眠の悩みが再び増える傾向にあります。
妊娠期や更年期の悩みは、日常生活を整えるだけでは改善しない可能性もあります。必要に応じて医療機関に相談しましょう。
妊娠中の睡眠不足や睡眠障害(閉塞性睡眠時無呼吸など)による睡眠の質の低下は、胎児の健康リスクとなる可能性が指摘されています。安全な出産と生まれてくるこどもの健康のために、妊娠中のお母さんは十分な睡眠を確保し、睡眠障害の予防に努めましょう。
交替制勤務では、睡眠の不調などの健康リスクに注意が必要です。
不眠や睡眠休養感の低下、業務中に眠気が続き、日常生活に支障を来している場合は早くに医療機関を受診することをお勧めします。
・健康寿命をのばそうSmartlifeproject 寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質大丈夫ですか?<外部リンク>
・健康づくりのための睡眠ガイドリーフレット<外部リンク>