○塩竈市手話言語の理解及び障がいの特性に応じたコミュニケーションの促進に関する条例

令和2年3月5日

条例第5号

手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語であり、音声言語と共に人間の自然言語を構成している。しかしながら、手話は、長きにわたり「言語」として認められず、多くの特別支援学校では、「口話法(相手の口を見て話を理解する方法)」が主流であったが、耳が聞こえない者にとっては習得が難しく、コミュニケーションに不便を強いられてきた。

こうした中、平成18年12月に「言語」とは「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう。」と明記された「障害者の権利に関する条約」が国際連合で採択され、手話が聴覚障がい者にとって欠かすことのできない言語であることが国内外で認められるようになり、平成26年1月に日本がこの条約に批准した。私たちは、手話が聴覚障がい者の言語であるという認識のもと、手話に対する理解を深め、聴覚障がい者との交流を通じて文化や歴史等を学び、手話の普及と社会的認知を図る必要があり、障がいのある人にとってコミュニケーション手段はそれぞれの障がいの特性により多種多様であることを認識し、理解しなければならない。また、未曾有の災害時において災害対策や地域生活での障がいへの配慮が不十分であることを認識しなければならない。

本市においても障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の選択と手話の利用の機会を確保し、地域社会で暮らす人と人との関係づくりを促進することにより、障がいがある人の意思疎通の権利を実現するため、障害者の権利に関する条約の理念を広く市民と共有する努力が必要である。

今後さらに、障がいのある人の人権の擁護と社会参加を促進するとともに、障がいのある人の生活や権利を阻害している偏見及び差別をなくし、全ての人が尊重され誇りと希望を持って生きる豊かな社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び普及並びに手話言語及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を利用しやすい環境の整備に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策を定めることにより、全ての市民が安心して暮らせる地域社会の実現を図ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 障がい 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がいをいう。

(2) 障がい者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第2条第1号に規定する障害者をいう。

(3) 市民 市内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。

(4) 事業者 市内において商業その他事業を行う者(行政機関を除く。)をいう。

(5) 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段 手話、要約筆記、筆談、点字、音訳、拡大文字、触手話、指点字、平易な表現、サイン、写真及び絵図等の障がいの特性に応じて利用される意志等の伝達手段をいう。

(基本理念)

第3条 手話に対する理解の促進及び普及は、手話が独自の言語であることを基本として行われなければならない。

2 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段を理解し、意思疎通を円滑に行うことが出来る環境の整備は、全ての市民が障がいの有無に関わらず、相互の違いを理解し、人格と個性をお互いに尊重することを基本として行われなければならない。

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段を利用しやすい環境の整備に関する施策を実施するものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が実施する施策に協力するよう努めるとともに、全ての人が利用しやすいサービスを提供し、障がい者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

(施策の推進)

第7条 市は、第4条の規定による責務を果たすため、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段の理解及び普及に関する施策

(2) 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段による情報発信及び情報取得に関する施策

(3) 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段による意思疎通支援に関する施策

(4) 手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段の支援環境の充実に関する施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

2 施策の推進に当たっては、次に掲げる計画(市が定めるものに限る。)と整合性を図るものとする。

(1) 障害者基本法(昭和45年法律第84号)第11条第3項に規定する市町村障害者計画

(2) 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第88条第1項に規定する市町村障害福祉計画

(3) 児童福祉法(昭和22年法律第164号)第33条の20第1項に規定する市町村障害児福祉計画

(手話を学ぶ機会の確保)

第8条 市は、聴覚障がい者、手話通訳者及び手話を使用することができる者と協力して、市民が手話を学ぶ機会の確保を図るものとする。

(手話を用いた情報発信)

第9条 市は、手話を必要とする人が市政に関する情報を正確かつ速やかに得ることができるよう、手話を用いた情報発信を推進するものとする。

(災害等への対応)

第10条 市は、災害等が発生した場合において、障がいのある人が手話言語及び障がいの特性に応じた様々なコミュニケーション手段により、必要な情報を速やかに取得し、円滑に意思疎通を図ることができるようにするために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第11条 市は、第7条第1項に掲げる施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第12条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

この条例は、令和2年4月1日から施行する。

塩竈市手話言語の理解及び障がいの特性に応じたコミュニケーションの促進に関する条例

令和2年3月5日 条例第5号

(令和2年4月1日施行)