九ノ吉と狐狸囃子 浦戸の無人島で一番大きな島は、大森島である。 昔から狐や狸が棲んでいることで有名である。 むかしこの島に「九ノ吉」という漁師がいた。 夜釣りを業として、大森島周辺の漁場に出かけるのであった。 ある晩、思いがけない程の漁があったので、夜も更けたので帰り仕度ををはじめていた。 すると、すぐ向い岸に灯が一面に見えてきた。 その明るいことは、まるで昼をあざむくばかりであった。 手をたたく音、歓声を上げる声、笛、太鼓のにぎやかな囃子など、とてもにぎやかに聞こえてくる。 「なんだなやー、あのお祭りみたいなのは、おらぁ、今まで見たことも聞いたこともねえだぞー、ふしぎなこともあるもんだ。」 九ノ吉は、ひとりごとを言いながら、内心は少々不安に思いながら、舟を岸辺に漕いで行った。 見ると、岸の舞台では、華やかな衣装をつけた美女数人が、唄や囃子にあわせて、踊りのまっ最中であった。 九の吉は不安も忘れ、このにぎやかな踊りに、うっとりして見とれていた。 しばらくすると、きれいに着飾った女がやってきて、 「よくきてくれました。なにもありませんが、どうぞお上がり下さい。そしてゆっくり見て下さい。」 と、親切に座敷に案内され、酒魚、珍しいご馳走がたくさん出され、大ふるまいをうけて、いい気持ちでそのまま、ぐっすり寝込んでしまった。 九ノ吉が眠りからさめたのは、東の空がほのぼのと明るむ頃であった。 そして、昨夜釣った魚を舟の中いたるところを探してみたが、一匹もいなくなっていた。 ただ、板の間には無数の足跡と、狐狸の毛がたくさん残っていたが、大森島の海岸は、いつもの様子とすこしも変わっていなかった。 大森島は野々島の北、朴島の西に位置する、浦戸諸島の無人島で一番大きな島です。 浦戸には、現在も“たぬき”が多く住んでおり、たぬきが出てくる話は多く残っています。
浦戸の無人島で一番大きな島は、大森島である。 昔から狐や狸が棲んでいることで有名である。 むかしこの島に「九ノ吉」という漁師がいた。 夜釣りを業として、大森島周辺の漁場に出かけるのであった。 ある晩、思いがけない程の漁があったので、夜も更けたので帰り仕度ををはじめていた。 すると、すぐ向い岸に灯が一面に見えてきた。 その明るいことは、まるで昼をあざむくばかりであった。 手をたたく音、歓声を上げる声、笛、太鼓のにぎやかな囃子など、とてもにぎやかに聞こえてくる。 「なんだなやー、あのお祭りみたいなのは、おらぁ、今まで見たことも聞いたこともねえだぞー、ふしぎなこともあるもんだ。」 九ノ吉は、ひとりごとを言いながら、内心は少々不安に思いながら、舟を岸辺に漕いで行った。 見ると、岸の舞台では、華やかな衣装をつけた美女数人が、唄や囃子にあわせて、踊りのまっ最中であった。 九の吉は不安も忘れ、このにぎやかな踊りに、うっとりして見とれていた。 しばらくすると、きれいに着飾った女がやってきて、 「よくきてくれました。なにもありませんが、どうぞお上がり下さい。そしてゆっくり見て下さい。」 と、親切に座敷に案内され、酒魚、珍しいご馳走がたくさん出され、大ふるまいをうけて、いい気持ちでそのまま、ぐっすり寝込んでしまった。 九ノ吉が眠りからさめたのは、東の空がほのぼのと明るむ頃であった。 そして、昨夜釣った魚を舟の中いたるところを探してみたが、一匹もいなくなっていた。 ただ、板の間には無数の足跡と、狐狸の毛がたくさん残っていたが、大森島の海岸は、いつもの様子とすこしも変わっていなかった。
大森島は野々島の北、朴島の西に位置する、浦戸諸島の無人島で一番大きな島です。 浦戸には、現在も“たぬき”が多く住んでおり、たぬきが出てくる話は多く残っています。
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